余命を高校に上がる前に僕は言い渡せれていた。

そのおかげで、死に対する恐怖は今は抱いていない。


素直に自分の死を受け入れている。


「できれば、恋の一つや二つしとけばよかったのかもしれない」

そんな半分冗談の言葉を口にしながら、視線は裏庭の桜に釘付けだ。


ふいに、桜の傍で動く影が視界を掠めた。

気のせいかと一瞬思ったが、やはりその影は動いている。

視力はいいほうだ。スカートが風に揺られているから、女子生徒だろう。


「行ってみるか」

なぜ、この時こんなことを思ったのか、今ではもうわからない。

けれど、その思いで僕は動いたんだ。