転ばされた…いや僕の不注意だけど、笑顔が引き攣る。

言葉のまま、敵とみなして斬って良いだろうか?


「……いや、待て」

「? 土方さんらしくないじゃないですか」

「…………」


今にも刀を出そうとする僕を、視線だけで止める。

流石に副長の命に従わない訳にはいかない。

けど……。


「何かあるんですか?」

「…いや、特に何かある訳じゃないんだがな…」


驚き、不審、などでまじった空間の中、山南さんが穏やかに問いかける。

が、土方さんは難しい顔をさらに歪ませ、視線を彼女の顔に向けた。




「なんかな……―――」

「おや?壬生浪士組はいつから落ちぶれたのかな?」


その時だ。

土方さんの声を、この場にはあるはずの無い高い声が遮った。


「っ…!!!」

「おっと。いきなり切り掛かるのはどうかと思うが?」


反射の如く、刀を一瞬で出しては声の方に切り掛かる。