佳乃はずっと、自分が怖いから、反論すれば嫌味が返ってくるから、誰も何も言ってこないのだと思っていた。
部署内の雰囲気をそんな風にしてしまったのは、自分の責任だと。
その雰囲気を変えない限り、自分が昇進をするなど、あり得ない。

仕事をしている以上、昇進はしたい。
しかし、どうやって雰囲気を変えればいいのかわからない。
そんな葛藤が、心の中にずっとあった。

「間違いやったら、誰もついてこん。俺はそんな人間、めっちゃ見てきたわ。」

色々思い出してうつむいた佳乃に、セッテは更に続ける。

「もっと、自信持つべきや。理想が高いんはええけど、それに執着しとったら、そのうち疲れて折れてしまうて。」

ぽん。
と、大きな手のひらで頭をなでられた。
うつむいていた佳乃の瞳から、涙がこぼれおちた。