そうやって教えてもらえないのは、何度目だろう。
縮まったと思った距離が、また開いていくようで面白くない。

答えをあきらめかけた頃、少しだけ間をおいて、セッテが口を開いた。

「アラサーやで、俺。」

耳を疑う。
どう見ても、25ぐらいにしか見えないのに。

「・・・今、童顔のくせにとか、思うとるやろ。」

「鋭いわね。」

25歳と、30歳前後は、結構違う。
見た目というよりかは、雰囲気が。
セッテは良くも悪くも若いが、時々悟った様な顔をする。

アラサーと言う事は、だいたい28~32歳の間なのだろうか。
言われてみれば、そう見えない事もないが、やはり25歳と言われた方がしっくりくるような気がする。

「男は30からなんやで。」

「あらそう。」

よくわからない彼の持論を一蹴し、佳乃は精算を終え、レジでカードを出した。
1メートルほど離れた台では、セッテが持参のエコバッグに、買ったものを手早く入れている。

(やっぱり、正確な情報はもらえないのね。)

なんとなくでも知れて、嬉しいのか。
それとも、きちんと答えがもらえなかったのが、悔しいのか。