「一生の恥だわ。」

「ええやん、泣くぐらい。」

「良くない!」

ずんずんと大股で肩を張り、自分のデスクに戻りながら、佳乃はなんとかいつもの自分に戻ろうとした。
後ろからセッテが軽い足取りで、ニヤニヤしながらついてくる。
その様子を、他の社員は驚きの表情で見ていた。

男性に涙を見られるのが、佳乃は本当に嫌いだ。
自分の中の弱い女性の部分をさらけ出すようで、ここ数年、人前で涙など流した事はない。
恋人の前でだって、泣けると話題の映画を見たって、誰かの前では泣かないようにしてきた。

たとえそれが数滴だったとしても、涙は涙だ。