野々宮と秋は楽譜を見ながら音を鳴らして、音楽にあまり詳しくない恵にはよく分からない相談をしあっている。

秋もしっかりやる気みたいだ。


「直志くん、いける?」

秋がピアノの前に座って声をかけた。

小山のことを下の名前で呼んでいるのは秋と彩矢だけ。

でも、名字にくん付け、さん付けで呼んでいる人たちが小山と親しくないというわけでもない。

なんというか、くん付け、さん付けが小山のあだ名として彼らの中に浸透している、というような気がする。