「アキちゃん、今から小山さんと曲やろうってなったんだけど、弾く?」
ギターをいじっていた野々宮は部屋にある電子ピアノを指差す。
曲やろうってなったんだけど、弾く? って。
なんかすごい。
今まで恵は見たことがない光景だ。
「俺が弾けるのなら弾くけど」
腕まくりをして、野々宮が持ってきた楽譜を覗き込んだ。
「久しぶりにアキちゃんのピアノ聴きたいなぁ」
百瀬がねだるように秋に言った。
言動がやっぱり子供に見える。
さっき、一個上ということを強調した意味が分かる気がした。
年上に見えないからだ。
そして、たぶんそのせいで野々宮たちに年上扱いされてない。