「あの、竹沢くん」


呼びかけて、裕が振り返った瞬間、考えていた苦しい言い訳の数々が綺麗さっぱりどこかへ飛んでいった。


あ、やば……。


「ん? 何かあった?」


「あー、えっと……。
これ、野々宮くんから貰って……」

チケットを見せると、あぁ、と納得して片方を受け取る裕。

「ノリが誘ったんでしょ、笹原さん。
俺と二人で平気?」

あ、あれ……?

なんだか拍子抜けしてしまった。

なんだ、野々宮くんちゃんと話してくれてるじゃん。