矢野が話しかけてくれなければ、恵の方から話しかけることなんてない。

もともとクラスの中で、正反対に近いところにいた2人。

今までがイレギュラーだっただけだ。


「今日の放課後、ちょっと時間良いかな」

一瞬の沈黙。


「ん、分かった。教室残っとくね」

変わらない笑顔で言った矢野に返した笑顔は、ぎこちなくなかっただろうか。

そんなこと気にしつつ、ふらふらと自分の席に戻った。