「………はっ」
堪えきれなくなって、俯く。
誰かを想うという意味を。
想いを伝えることの尊さを。
想いが相手に届く奇跡を。
そして、人にとって本当に大切なもの。
全部全部、
「…あたしも、だよっ……」
河田に出会わなければ、分からないことばかりだった。
そっと、遠慮がちに、河田があたしの肩を引き寄せる。
その手は微かに震えていて。
心臓の鼓動は驚くほど速い。
「…好きだよ」
涙でぐしゃぐしゃの顔を河田の肩に埋もれさせて、言う。
「…ぼ、僕も、すっす、す…す、しゅきです!」」
「…何とかなんないの、その噛みクセ」
「…すすすみません、その、あまりに、ききき緊張してしまいまして……」
あたしを引き寄せてから、緊張からなのか、ピキンと硬直して微動だにしない河田。
…まぁ、いい。
これから、ゆっくり。
時間はまだまだ、たくさんある。
「…これからよろしくね、河田」
「ここここちらこそっ!!!」
涙で濡れた顔を拭って、もう一度強く、河田の背中に手をまわす。
ありがとう、河田。
河田を好きになれて、
…恋を、教えてくれてありがとう。
-fin-