それから時は流れ…
「これ、牧瀬さんがこないだ読みたいって言ってた本、持ってきました」
「マジ?ありがとう!」
あたしと河田は、こうしてたまに、お互いのクラスを行き来したりしている。
まぁ、あたしが河田のクラスに行く方が圧倒的に多いけど…
でも今日は河田がわざわざ、あたしの為にクラスまで来てくれた。
しかもこないだ、何気ない会話の中でサラッと言っただけなのに…覚えててくれたんだ。
河田に貸して貰った本を胸に抱き、キューンとしていると
「お前まだ諦めてないんだ?あのブサ男のこと」
振り返ると、最近また髪を明るくチャラ☆染めした純平が立っていた。
「ブサ男って言うな」
「は?美愛だっていつも言ってんじゃん」
「あたしはいいの!あんたはダメなの」
「何だそれ?」
呆れたようにハッと息を吐き出す純平。
てかこんなチャラ男に構っている暇はない。早く河田に借りた本を読まないと貴重な昼休みが終わってしまう…と、自分の席へ戻ろうとすると
「美ー愛」
ガシッと純平に腕をつかまれた。
「何。はなしてよ」
「今日、放課後、中庭のベンチ」
「は?」
「相談あるから来て」
「相談?」
純平があたしに?
っていうかコイツにも悩みなんてあったのか…
そんな若干失礼な事を思いつつ
「やだよ面倒くさい」
即答した。
「そんなこと言わずにっ!美愛にしかのれない相談だから。なっ?」
「えぇー…しょーがないなぁ」
純平のいつになく強い瞳に圧されて、渋々頷く。
それにしてもあたしにしかのれない相談ってなんだろう…?