…どうやらコイツは、あたしのかわりに、この元彼氏に殴られたらしい。
……なぜ?
「なんなんだよっ、お前…!」
元彼氏のそんな疑問に、あたしも頷く。
するとそのダサ男――河田一樹は、
「おっ…女の子にはっ、やや優しくしないとダメなんでしゅ!!」
…しゅ?
その時、昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。
「…っち、じゃぁ、授業始まるからまたな」
お前マジメだな。
意外とマジメだった元彼氏が屋上を出ていき、あたしとダサ男、二人きりになった。
「けっ怪我はないでしゅか?」
振り向く河田。
決して大きいとはいえない、円らな瞳があたしを心配そうに見ている。
「…ってか、あんたこそ大丈夫?頬めっちゃ赤いけど」
凄まじい音がしたしな…
すると河田はニコッと微笑んで
「僕は全然大丈夫です!」
…瞬間。
ひゅーんっ
すとんっ
あたしの中の何かが
おちた。