中では広報課の部長である楠圭吾が電話中だった。

先ほど、響子が言っていたように相手は頭取らしい。

少し待てと手でジェスチャーする楠に遥は頷く。


「畏まりましたそのように伝えます。」

そう聞こえた後、ガチャンと受話器が置かれる音がした。

ビクッと体を震わせた遥を楠はじっと見つめ、

「西園寺のお父上と頭取は旧知の仲なんだったな。

今、頭取から連絡があった。

すぐに西園寺を自宅に帰すようにと。

下で水島専務がお待ちだそうだ。

早く用意して行きなさい。」

そう告げると用事は済んだとばかりに手を振る。

「ありがとうございます。失礼します。」

ぺこりと頭を下げ部長室から去ると、バッグをつかんで広報室から飛び出した。