プルルルル…
電話が鳴っていた。
手を動かし、音の鳴る原因を探し出す。

「ハロー」
こんな時間に誰だよという怒りのオーラを言葉に込めて出た蓮に

「おい、蓮は知ってたのか?」
と父の声が届く。
「は?何を。」
イキナリすぎて何が言いたいのか分からなかった蓮が聞き返すと
「遥ちゃんのことだよ、遥ちゃんはお前のことが好きなんだと思っていたのだが…」
と言われる。
「だからなんだよ?くだらないことだったら切るぞ。」
そう怒鳴る蓮に
「遥ちゃんが婚約したんだよ。上条幸翔君と。
いきなりだったから驚いてな。まぁ…」
父親の話は続いていたが、既に耳に入ってはいなかった。

なんだ…って?婚約、した…?
誰と…?

誰に対してなのか、無性に腹が立った。
許せなかった。

そんなつもりなら、もういい。
俺は知らない。
勝手にすればいい。

その時の俺には分かってはいなかった。
この腹立ちの理由がなぜなのか。
どうしてこの選択をしたのか…
この時の俺は選択を誤ったとは思っていなかった。

だから彼女に会わなかった。
電話もしなくなった。
とにかく、彼女に関してのすべての情報をシャットアウトした。
そうすることで逃げたいた。