12月24日
「真っ赤なおっはーなーの~♪
となかいさーんーは~♪」
「…音痴」
陽気な歌声にクスッと笑う。
私、黒澤ひなた。
「明日になって、
この靴下に一つだけプレゼントが
入ってるとしたら…
何がいい?」
隣にいる彼は
ツリーに飾る赤い大きな靴下を見ながら、
私に問いかけた。
「うーん。
一つだけかぁ…悩むなぁ」
この時は、幸せで
ただ隣にいるあなたに夢中だった。
私たちはまだまだ幼かったね。
だから…
上手なピリオドの打ち方なんて、
知るはずもなかったんだ。
でも、
でもね。
こうしてまた、あなたが隣にいてくれた。
今は見守ってるだけだけど、
近くにいるよ。
今度は、
私があなたの隣にいてあげる。
-冬のあったかい日-
「メリ~クリスマス?」
中学生になって初めてのクリスマス。
冷たい手を擦りながら
玄関を出た私は…
何だか少し
暖かくなった気がした。
「寒いからいいって言ったのに」
ふわふわのマフラーを巻き直しながら、
私が出てくるのを待ってくれていた彼に言った。
少しむくれて。
なのに…
彼からは一行に返事が返ってこない。
まさか寒すぎて…凍った?
「ねぇ…聞いてる?
ハル?
………春輔?」
「ん?
あーじゃあ、行こっか」
“春輔”と
私が呼ぶのを待っていたかのように
返事をした彼。
伊崎春輔(いざきしゅんすけ)
みんなからはハルと呼ばれてて、
私もいつもそう呼んでいる。
返事をしてくれないから、
いつもと違って
春輔って呼んでみたんだけど…
びっくりするかと思ったのに、
返ってきたのは満面の笑み。
びっくりしたのは私の方だったみたい。
「わぁ~久しぶりだな~
ハルの家…」
着いたのはハルの家。
「…俺、
ジュース取ってくるから
先に行っといて。
部屋、いつものとこな?」
「りょうか~い」
いつものとこ…
玄関に靴何足かあったから、
先に誰か来てるみたい。
「メリ~クリスマ~ス…」
広い廊下を進んで
目の前のふすまを開けると、
「おっ来た来た!」
「よう」
先客は二人。
勇人と優美。
優美は私の大親友!
実は、小学五年生の冬に引っ越してきた私。
そんな私が、
游いつ心を許せた女友達が優美だった。
「誕生日おめでとう。ひなた!」
「おめでと」
「ありがと!」
今日12月25日はクリスマスでもあり、
私の誕生日でもある。
「ひなた~ハル、
ちゃんとおめでとうって言ってくれた?」
「…ううん。まだ」
「えっ!!マジか…
いやっあのきっと恥ずかしいとか?
そう。そうだよ!」
優美は焦りながら、
「俺がひなたをむかえにいけっつったら結構あっさり行ったんだけどな。
まぁ気にすることねぇよ」
勇人は励ますようにして言葉をくれる。
ハルが私におめでとうを
言ってくれなかっただけなのに、
二人がこんなにも私を励ましてくれる
そのワケとは…