まともに唇が離れたのは、
俺が彼女の中で果てた後の事だった。


彼女の荒い息と、俺の荒い息が、
虚しいこの空間を、更に虚しくさせる。

俺は彼女の細い首を両手で抑えた。

このまま殺してしまおうか?


「出来ない、でしょ?」


彼女が真っ直ぐ俺を見る。


「どうしてそう思うの?」


俺は両手に微かに力を込めた。
こんな細い首、簡単に潰せる。

すると、彼女の手がスッと伸びて、俺の頬に優しく触れる。


「だって、」


そして、彼女の顔に雫が落ちた。


「こんな顔で泣いてる人が、人なんて殺せないでしょ?」