「さーってと、もーすぐ1時。午後部活始まるから、行こ」
今までいた階段を立ち上がって、それぞれのパートの部屋に歩き出す。
もう大会は終わったから、1年生だけで行うパートはもうない。
だから、よけいにソウちゃんとしゃべりにくいんだ。
最近、ソウちゃんと長い会話をした記憶がない。
それが私が避けているかなのか、
ただタイミングが合わないだけなのかはわからないけど。
「...呼ばれたい、な...」
一人の廊下。
ポツリとそんなことをつぶやいてみる。
『シオ』って、ソウちゃんから。
最近呼ばれてない。
あの、微妙に低いトーンで、目じりを下げながら笑うの。
『シオ』って、塩っていうイントネーションじゃなくて、オが下がるイントネーション。
ソウちゃんの優しい呼び方が好き。
声が好き。
思い出すだけで、胸が高鳴る。
......会いたい。