「てか、お前今日遅かったな...何やってたの?」
「ソウちゃんからね...猛特訓うけてたの」
あ、やばい。思い出したら泣けてきそうだ。
出来ていない楽譜。上手く鳴らないサックス。
「自分の下手さって、高校入ってよくわかる。
私ソウちゃんに比べたら、全然全然下手なんだ」
リョウスケには、こういうこと気軽に言えちゃうんだよなぁ、とか思う。
昔から、何かあるとリョウスケに相談するのがお決まりだった。
「んー...まぁ、そんなもんだろ。
実際、何もしないで出来るヤツなんてこの世にいねーだろ?」
「でも、ソウちゃんは上手いよ...」
「...シオ、バカだな」
リョウスケが、こつんと私の額に手をやった。
「アイツの手、見たことねーの?
手の皮分厚くて赤くなってるの、あれはサックス吹いてるからだろ」