「...ココア?」
まさかこの夏の時期にココアをもらうとおもわなくて、思わずきょとんとしてしまう。
「いや...疲れた時は甘い物っていうじゃん」
「えっ」
差し出されたココアを受け取って、恥ずかしそうに横を向いたソウちゃんを見て、
なんて不器用な優しさなんだろうと思う。
こんな時期にココア。
普通なら誰もきっと選ばない。
だけどこれが、私のためってわかっているから。
「...ありがとう」
「どーいたしまして」
恥ずかしそうに笑ったソウちゃんの後ろに、窓に映る月が見えた。
もうこんな時間なんだ。
施錠時刻は、とっくにすぎている。
「じゃ、帰るよ」
「えっ」
ソウちゃんがなんのためらいもなくそう言うから、思わず驚きの声が出てしまった。