ぶんぶんと、首を横に振る。
やめたくない。諦めたくない。
サックス、まだ吹きたい。


「...口がもうばててる」

「でも...やりたい...」

「明日吹けなくなる方がこっちには迷惑」


ソウちゃんが私の楽譜を手に取って、畳んだ。
やばい、泣きそう。
必死にバレないように下を向く。


「...ごめん」


口から出たのはそんな言葉で、自分がこんなにも情けない人間だったなんてことを、今更心底気づかされた。



「...ほら、もう帰るよ」



ソウちゃんはそう言いながら、私にココアを差し出した。