別れ際、駅に入っていく咲さんに手を振りながら「バイバイ」って言う。
そしたら咲さんは、一回後ろを向いたのに、もう一度私の方に振り返った。
「ねぇ、シオって呼んでいい?」
星がキラキラと光る。
手先が冷えるほど寒いのに、何故だか心がほわほわする。
「―――も、もちろんっ!」
咲さんは、今日一番の笑みを見せて、
「じゃあ、咲って呼んで!」
って、手を差し出した。
私はその手を、恐る恐る握って。
ぎゅっと、握った手に
確かに私は〝友情〟を感じたんだ。
背の高い咲さんが、少し屈んで私の耳元でつぶやいた。
「ごめんね、ホントはもう一個。
教えないつもりだったけど、シオちゃんが可愛いから教えてあげる。」
咲さんが、冷たい指先をそっと私の手から放した。
「ソウの好きな人は、私じゃないよ」
咲さん――いや、咲はそのまま駅へと消えていく。
彼女が吐いた息は、白く白く星空へと消えた。