リョウスケは、「どこ行きたい?」とも、「何が食べたい?」とも聞かず、淡々と私の手を引いて歩いてくれた。
デートコースとか、よくわからない。
だけど、きっと女の子が喜ぶようなところばかりで。
もしかしたら、悩んで考えててくれたのかもしれないとか思うと、自然に頬がゆるんだ。
「あ、コレ可愛いー・・・」
手に取ったのは、ネコのストラップ。
灰色のネコが、金色のサックスを持っている姿が、どことなくソウちゃんに似ていると思ったのだ。
「何?ほしいの?」
リョウスケが寄ってきて、手に取ったストラップを覗き込む。
「どうしようかな・・・」
値札を見ると、そんなに高くはなさそうだった。
全然自分で買える値段。
だけど、伸ばした手を私は引っ込めた。
「やっぱ、やめるね」
ソウちゃんに似てるから欲しい、なんて。
彼をあきらめなくちゃいけない私が、なんて図々しいことを考えたんだろう。