タッタッタッ・・・
近づいてくる足音が、きっと彼のものなんだろうと知っていても、顔をあげることができなかった。
「ゴメン!シオ・・・待った?」
「え?!あ、大丈夫っ」
そんなぎこちない会話をしながら、ぎこちない笑顔を返す。
「そ?じゃ、行こ」
いつもと同じだった。
だって、彼――リョウスケとは、毎日行き帰り一緒だったんだから。
そう、いつもと同じなはずなのに、『幼馴染』っていう関係から一日踏み出してしまうと、朝の景色はこんなにも変わる。
「あ、うん――」
そして、リョウスケは私の手を何も言わずに握った。
その瞬間、思う。
______私は、リョウスケの『彼女』なんだ――