「で、俺らの最後の夏の大会。
どうしても・・・毎年の地区銅だけは、避けたかった」
ソウちゃんの声色が変わった。
「真剣にやらない奴らを見て。どうしてだよっ!って、思ったんだ。素質は絶対にあるはずなんだ。俺は、期待してない奴らなんかにそんなことは絶対に言わない。だから、ホントに」
「うん・・・」
「それで、一回、カッとなって・・・『なんで、もっと真剣にやらねぇんだよ!』って叫んだことがあって」
「・・・うん」
「その時、周りの奴らの、冷たい視線を見た」
ゴクンと、喉が鳴る。
「その時のアイツらの顔、ぜってー忘れない。
『才能があるヤツは、そーやっていつまでも夢を捨てられないんだな』って言った、アイツの顔も・・・」
何も、言えなかった。
違う。
何を言っていいのか、わからなくて。
いつも完璧主義のソウちゃんが、ただの小さな男の子に見えて。
その小さな背中を・・・抱きしめたいと思った。
その震える、いつもより幾分か小さな背中を。