「シオ、ここに座って」


ソウちゃんが、自分の隣に置いてあるイスをぽんぽんとたたいた。


私は涙をぬぐいながら、そこへゆっくりと腰を下ろす。


あぁ、あの時と一緒だ。


ソウちゃんに、好きな人がいると聞いた時。




そう言えば、ソウちゃんは人に好かれることが苦手だと――そう、言っていたな。




「俺の中学、すごい弱かったって話、したろ?」


あふれだす涙のせいで、うなずくことしかできなかった。


「俺は、吹奏楽部に入ったときから、この部活を変えなきゃダメだって思ってた。
みんな、素質はあったんだ。なのに、先輩も、同級生も、先生だって、やる気がなくて」


うん。・・・うん。



「俺は、それなりに真剣にやってたから・・・まぁ、なんていうか、初めから素質もあったのかもしれないけど。ソロコンで金取るくらいには成長してたんだ」


ソウちゃんは上手いよ。

その裏に、どれだけの努力と苦労があったのかは、計り知れないくらい。