「先輩、大変っすね」
またもやソウちゃんに群がるサックスパートの1年女子達を横目に、唯一の男子である、テナー吹きのナガシマくんがそうつぶやいた。
「大変、というか...」
「すいません、同じ1年として恥ずかしいっす」
ペコリと頭を下げたナガシマくん。
決して整った顔じゃない。
ルックスもそんなによくない。
だけどこの子は、ホントに入部当初からイイコだ。
おもしろいし、何よりこうやって空気が読めるし気が利くし。
「ソウちゃんは、カッコイイから」
ソウちゃんはカッコイイ。
でも、スパルタだし、時々Sだし、毒舌だし。
カッコイイだけじゃないよ。
何も知らない一年生が騒ぐほどソウちゃんの中になんて入り込めないよ。
それは私が一番よく知ってるの。