「和くん!
ごめんね。お待たせ!」



昇降口から走って和くんの元へ向かった。
すると、



「唯!!
走って来るなよ!」



そう怒鳴りながら和くんが走ってきた。

怒った和くんにびっくりして立ち止まると



「あ…大声出してごめん!
唯の喘息が心配で…」



と言って俯いてしまった。



「和くん。心配してくれてありがと。」



そう言って微笑むと
和くんはゆっくり顔をあげた。



「でも大丈夫だから!
私の身体だよ?私が一番わかってる。

今は和くんのために走って行きたかったの。
でも心配かけてごめんね?」



「いや、俺こそ…

ちょっと心配しすぎたな」



と、微笑んで、
走って乱れた私の髪を整えてくれた。



校門を出て歩く。

さりげなく歩道側になってくれて嬉しくて隣を見ると整った顔がまっすぐ前を見ていた。



横顔だけなのにイケメンなんてずるいよ。



そう思っていると、ん?と私の方を見た。


「いや、和くんはイケメンだなーと思って。」



「え?」



「目はシュっとしてるし、鼻も高いし、唇は薄いのにぽてっとしてるし…
私も和くんみたいな顔が良かった。」



和くんが優しくてイケメンで、

自分にない要素が羨ましい…
そう、思っていると足元が止まってしまった。


俯いた私を見て和くんが、


「唯は自分をわかってないな。」


そう言い出した。



「唯はめちゃくちゃかわいいよ。

唯はよく俺に優しいって言うけど、唯が優しいからそれを返してるだけだよ。

唯が気にしてる少し垂れた目もちょんとのった鼻もぷっくりしてる唇も。

本当に日に日に可愛くなって…
悪い虫が近づかないか心配で眠れないよ。」



本当かどうかはわからないけど
そう言ってくれた和くんの気持ちが嬉しくて泣きそうになった。



「泣くなよー」



「まだ泣いてないもん。

それと!
和くんは私に甘すぎ!
そんなんじゃ和くん離れできないよ!」



「甘くていいんだよ。
兄貴なんだから。
妹をかわいがってなにが悪い。」



「兄って言っても5分だけだよ!」



「5分だけでも兄は兄なの。
ほら、いいから行くぞ。映画、観るんだろ?」



そういって私の手を優しく握り直しまた歩きだした。