( ヨウ素 ケイ素 テルル ルテニウム )
その日の帰り道、私と彼は一緒に帰る。
だけれど話すのは私だけで、彼は隣で時折短く返事を返してくれるだけだ。
…もしかして、面倒なのかな。
決して趣味が合うわけでもない。
話題も私の好みの話題ばかりでつまらないのかもしれない。
何より沈黙が辛いのだ。
こんなことになるなら。
君に嫌われてしまうのだったら。
片想いのままで良かったのかもしれない。
君を見ているだけで十分だったのに、私は自分の気持ちを押し付けてしまって。
瞳に涙の膜が張り、周りの景色がぼやけた。
「あのさ、」
「…なんだ。」
「もう、いいよ。無理に付き合わなくて。」
「…」
「私の気持ちばかり押し付けてごめん、もう…やめるから。」
「…」
彼は口を開こうとしない。
嗚呼もう、もうそれが答えでしょう。
「今までありがとう、ごめんね。」
「…言っている意味が理解出来ないんだが。」
「、っだから!」
「別れよう、と言う事か。」
「っ、…」
「御前が一体何を思ったか知らないが、--俺は好きでもない奴の気持ちを受け取りはしない。」
「え、…?」
彼の言葉は決して難しい言葉ではなかったけれど、理解に時間がかかった。
彼はそう言うと、胸ポケットからペンを取り出し私の手に何かを書き始めた。
初めて触れられ緊張してしまう。
「馬鹿には付き合いきれん。」
「こ、これって」
「分からなくていい。」
彼が何かを書き終え私の手を離す。
其処にはいくつかの単語が書かれていた。
私を家まで送ってくれると最後に、
「変なことで悩む暇があるなら勉強でもしたら如何だ。」と言い残し帰ってしまった。
私の手に書かれているのは
"ヨウ素 ケイ素 テルル ルテニウム"の4つの単語
科学の用語である事は流石に分かる、けれど。
「…だから、何なんだろう。」
この単語の意味は一体何なのか。
何処までも謎な人だなと思う。
「ヨウ素―…は、Iでしょ?」
私は科学の教科書を取り出しその4つの単語を調べ始めた。
「…ルテニウム、はーーRu。」
ああ、私は一生
あの人には敵わないだろうな、と思う。
明日、君に返事をしてみよう。
私が解けるはずがないと思っているかな。
「私もです。」
( I Si Te Ru )
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「愛してる」
理数系男子。
無理矢理ですねすいません
科学の授業中に浮かびました…(・ω・`)
観覧ありがとうございます。
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