結局、彼女は他愛ない雑談しか出来なかった。
 ぼんやりとベッドに腰かける。眠気は襲ってきているのに、眠る気にはなれなかった。
 恵子の態度は、帰宅途中も可笑しかった。それでも、継美にそれを問いただす勇気はなかった。人にとって大切な領域に、土足で踏み込んではいけない――そう、自分を納得させる。
 しかし、納得しがたい気持ちも同時に込み上げてきた。恵子は、自分に声をかけてほしかったのではないか。
 結局のところ、それは少女の推測でしかないのだが、彼女にはそれが正しいような気がしてしまう。彼女には、自分に対し否定的な意見が正しいような思い込みをする節があった。
「……寝よ」
 このまま悶々としていても、何も変わらない。継美は毛布に潜り込み、まどろみへ身を委ねることに決めた。