あ、結城真一、ちょっと笑ってるわ。
だから、そうやって笑ったらいいのよもっと。
さっきまであんなに怖い顔だったのに。
ちょっと笑うだけで、こんなにも嬉しい気持ちになるの。
結城真一の笑顔は優しくて安心するし、落ち着くから。
貴重な笑顔をじっと見つめる。

「なんだよ?」

見てたのに気付かれて、不機嫌そうに言われちゃった。

「いいじゃない、もっと笑ってよ」
「ふん…」

あ、仏頂面に戻っちゃった…。
もったいない。

相変わらず平野篤はにこにこして、見習ったらいいのよ。

「じゃ、帰りな」

そう言って仏頂面のまま教室に向かって歩き出す。
その背中を見送りながら、平野篤に

「唯ちゃんはシンが怖くないの?」

不思議そうに聞かれた。
確かに、さっきの結城真一は怖かったわね…。

「怖くないわよ、最初は怖かったけど。本当は心配してくれて優しいのがわかるから」
「そうなんだー」

終始にこにこしながら言われる。
あたし、何かおもしろいことでも言った?

「シンと唯ちゃん、仲良しだねー?」

はっ…
はぁあああー?

結城真一と、あたしが、仲良し?

なっ、なんでそうなるのよ!?

「な、なんで?」
「そう思ったから」

理由を聞こうとしても

「早く教室行かなきゃ、授業始まっちゃうよ」

はぐらかされちゃって。

どうして結城真一とあたしが仲良しなんて思ったのかしら…。