「よくわかんないけど、解決したみたいだねー。じゃあ、俺も帰るからー。じゃあねー」

またあっという間に先に帰っちゃった平野篤の背中を見送って。
残された結城真一と目があう。

「帰るぞ」

短く言って。
歩き出した結城真一にふらふらついて行く。

結城真一は階段で待っててくれたんだけど、後を追いかけてきたともちゃんに告白されて、また教室に戻ったみたい。

確かにあのまま階段にはいられないわよね…。

そのあとにあたしが階段に向かって、ともちゃんと会っちゃって。
で、戻ってきた結城真一と鉢合わせ…。

ああ、明日からどんな顔してふたりに会えばいいのかしら…。
頭の中がごちゃごちゃしちゃって、うまく考えられないわ…。

「それにしても、おまえがそんなふうに思ってたなんてな?」

急に話しかけられて。

「え、なんのこと?」

そんなふうってどうんなふう?

「おまえ、俺の何を知りたいんだ?」

意地悪く笑いながら、からかうように言われて。

わ、忘れてたー!!
あたし、そんなこと言っちゃったんだっけー!!

「いや、あの、それは…」
「俺は別に笑わなくてもいいけど?」
「そっ、そうよね?」
「怖いだけじゃないなら、なんなわけ?」

次々に突っ込まれて…。
うまい答えが見つからない…。

そんな慌てるあたしを、何がおもしろいのか笑いながら見つめられて。

だからっ!!
そうやって笑ったらいいのよいつも!!
なんで今になって笑うのよっ!!

あんまりにも優しく笑うから、急に意識しちゃって顔が熱くなるのを自覚する。
もう、どうして?

そんな笑顔、反則よっ!!

「どうして笑わないの?怖い顔ばっかりして。だからちょっと笑っただけでびっくりされちゃうのよ。本当は優しいのに」
「ああ、別に、おまえが知っててくれたらいいよ」
「あたしだけが知ってても意味ないじゃない」
「別にいいだろ」
「よくないわよ」
「おれはおまえが知っててくれたらそれでいいけど」

ああ、もう、何よそれ。
考えれば考えるほど意識しちゃって恥ずかしくなる。

あたしだけが知ってるってこと?

あたしだけが知ってればそれでいい、なんて…。
あたしが特別みたいじゃない…。

しかもそれを嬉しく思うなんて。
あたしってばまるで結城真一のことが好きみたいだわ。

す、好きだなんて!!
まさかまさかそんなことっ!!