「ところで、おまえ」

結城真一は改まってあたしに向き直ると、一歩近付いてきた。

ん?
あれ?
距離が近い…。

「おまえ、あいつらに俺と付き合ってるって言わなかったのか?」
「そっ、それは…」

じりじりと近付いてきて、壁に追い詰められる…。

「言えばよかったのに。何で言わなかった?」
「言ったところで信じてもらえるかどうか…」
「俺を呼べばよかっただろ、俺が証明してやるよ」

証明?
宣言するってこと?
さっきあの集団の前で言ってたわね。
人前で言ってどうするのよ…。
なんて考えてたら。

結城真一は棚に手をついて、あたしを両手で挟むように立つ。

何よこれ…。
身動き取れないし、逃げられない…。

「おまえが俺と付き合う理由ってなんだ?俺の名前を利用することじゃねえのか?」
「利用なんて、そんなこと…」
「とにかく呼べよ、何でもいいから」

う…。
顔が怖い…。
怒ったように言われちゃって。
どうしたらいいの?

でも、ここで怯んだら負けちゃう…。

「どうして来てくれたの?」

かなり強気の態度で言ったつもりだったけど。

「おまえが歩いてくのが見えたから」

さらっと言われちゃって。
でも、言われて気付いたの。

「来てくれなかったら、今頃どうなってたか…」
「言うな、考えたくない」

あたしも考えたくないわ。
そう思ってたら。

背中に腕を回されて。
ぎゅうと抱きしめられたの。

ぎゃぁあああー!!
こっ、これじゃ昼間と同じじゃない!!

急に抱きしめられて、ただでさえどきどきしてるのに。
昼休みのことまで思い出しちゃって。
余計にどきどきして、もう胸が苦しい。

背中に回された腕に、ぎゅうと力を込められて。
またあたしはさらに抱き締められたの。

緊張して体が硬直しちゃって。
すごい力で押さえつけられてるせいで、全然身動きとれない。

「あ、あの…」

それだけ言うのがやっとで、もう何も言えないし…。
でも。