「おまえ、クラスの女どもに囲まれたらしいな?」

また唐突に話し始めて。
さっきの話の続き?
平野篤に聞いたんだっけ?

「大丈夫だったか?」

え?
もしかして、心配してくれてるの?

真面目な表情で、じっとあたしを見つめる結城真一の視線が痛くて…。
思わず顔を背けちゃった。

あ、やだ、露骨すぎたかしら。

結城真一はちょっと傷ついたような表情を見せて。
あたしは申し訳ない気持ち…。

そんな顔で見ないでよっ!!

「あ、えと、大丈夫よ」

たったそれだけの言葉を、必死に伝える。
さっきから掴まれたままの腕を急に意識しちゃって。
また余計にどきどきするの。

でも、あたしのこと、気にしてくれてたのね?
女の子たちに囲まれたあたしのこと、心配してくれたんでしょ?

朝だって、あたしがあの集団と会ってないか心配してくれてたし。
それに今だって、あたしがあの集団と会わないようにしてくれたんでしょ?
まあ、自分が会いたくないっていうのもあると思うけど。

そういえば…。
結城真一はあたしのことが心配って、平野篤も言ってたわね。

ていうか…。
あたしってそんなに心配かけてるの?
なんでそんなにあたしが心配なの?
そう思ってたら。

「ところで、おまえ」

突然ぐいっと腕を引っ張られて。
バランスを崩したあたしは結城真一の胸に思いっきり飛び込んでしまった…。

ぎゃ、ぎゃぁあーー!!
なっ、なんで!!
なんでこんなことになってるの!?

何も考えられないあたしは、ただ慌てるだけ…。
さらに結城真一に肩を抱き寄せられて。
腕に力をこめてぎゅうと抱きしめられた。

ちょ…
ちょっと待ってよ!!
何よこれなんでこうなるのー!?

耳に息がかかるほど顔を近付けられて。
一気に顔の熱が上がるのがわかる。
意識したくないのに、嫌でも意識しちゃって…。

どうしたらいいの?

でも、緊張して体が硬直しちゃって。
思うように動けない。

振り払おうと思えばできたかもしれないのに。
なぜかそれができなくて…。
ただじっとしていることしかできないの。

どうして?

「おまえ、誰にも言ってないだろうな?」

囁くように耳元で言われて。
耳に息がかかるのを感じてくすぐったい。