「はい、おかげさまで」
「ああ、よかったな」

う、嘘っ!!
結城真一が笑ってるー!!

にこにこ笑う結城真一に見つめられて、思わず顔が熱くなる。

もう!!
何よ、その笑顔はー!!
滅多に笑わないくせにっ!!
どうして今、笑うの!?

「シンは唯ちゃんのことが心配なんだよねー?」
「うるせえな」

からかうように平野篤に言われると。
結城真一はまたいつもの仏頂面に戻っちゃった。

残念ね…。
せっかく笑ったのに。

ん?
残念って、なにが?
あたし、なんで残念なんて思ってるの?
ただ、もっと笑ったらいいのに、とは思うの。

なんてのんきに考えてたら。
教室に着いた途端、あたしに詰め寄る女の子たちに囲まれて。

「ねえ、御崎さんさっき結城様と一緒だったよね?」
「どうして一緒だったの?」
「結城様に話しかけられてたよね?」
「結城様と何話してたの?」
「結城様、笑ってたよね?」

か、完全に逃げられない…。

「え、えっと、あの…」

次々と質問されて…。
もう、どうしたらいいの!?

「ねえ、結城様とどうなってるの?」

ど、どうなってるって、何が?
ていうか結城様って誰?

「あの、さっきから、結城様って誰のこと?」

誰に聞いたわけでもないあたしの質問に、女の子たちがざわざわとざわめく。
え、あたし、何か変なこと聞いた?

「結城真一様だよ?」

結城真一?様?

「あ、ああ、そうだったの…」

ていうかなんで様付けされてるの?
結城真一ってそんなふうに呼ばれてたの?

ああ、そういえば…。
女の子たちが結城様って呼んでるのを聞いたことがあるのを思い出す。

俺様だから結城様
不機嫌なオーラが俺様

そういえばそうだっけ…。

「御崎さん、結城様のこと知らないの?」
「そうね…。全然知らない」

これは事実だし嘘は言ってない、はず…。