月曜日に登校した学校は、いつもと全く変わった様子も無くて。
いつも通りの朝の登校風景。

いろいろ考えすぎちゃって…。
もしかして、あの土曜日の出来事は夢だったんじゃないか…。
とも思ったりして。

でも、携帯の電話帳には結城真一の名前。
やっぱり夢じゃなかったのね。
できることならなるべく会いたくない。
と思ってたのに。

だけど、いきなり昇降口で会っちゃって。
視線を感じてふと顔をあげると。
そこには結城真一と平野篤の姿が!!

「よお」
「おはよー」

結城真一に意地悪そうに笑いながら言われて。
平野篤の間延びしたのんびり口調が続く。

もう、その顔やめてよ。
その笑顔が逆に怖いわ。
かといって怖い顔も嫌だけど。
ああ、やっぱり夢じゃなかったのね…。

ざわざわと人の視線を集めるふたりの傍は居心地が悪い。
いつもこんなふうに見られてるの?
注目される気分は楽しいものじゃないわ。

ふたりとも、視線なんて特に気にもしてない様子で上靴に履き替えてるけど。
やっぱり楽しくないわよね?

なんて思ってたら。
上靴に履き替えるあたしを待ってたみたいで。
なぜか三人で並んで歩き出す。
先に行っててくれて良かったのに!!

でも…。
歩き始めてしまったからには仕方ない。
今さら急いでるって言うのも変だし。
遠巻きに眺める人たちも邪魔だし…。
教室までの我慢だと思えばいいか。

「いつもこんなに注目されてるの?疲れちゃうわね?」

聞いたら結城真一は少し驚いた表情を見せたけど

「ふん、別に意味なんてねーよ」

やっぱり特に気にしてないみたい。
慣れてるのかしら?

「おまえ、昨日は何してたんだ?」
「昨日?昨日はピアノ教室へ行ってたわ」
「ピアノ?おまえ、ピアノ習ってるのか?」
「そうよ、土曜日もピアノ教室の帰りだったの。日曜日は自由に使っていい練習室があるんだけど、ピアノを練習したり、フルートを習ってる方と合奏したり、とっても楽しかったわ」

真剣な表情であたしを見る結城真一に気付いて、急に恥ずかしくなる。

あ、あたしったら一方的に話しすぎたかしら。
楽しかった昨日を思い出してつい余計なことまで…。
結城真一にしたら、あたしの昨日なんて別に興味ないと思うのに…。
聞きたくないわよね、こんな話。

「てことは、あいつらに会ったりしなかったのか?」

え?
もしかして、心配してくれてたの?

思いがけず優しく聞かれて驚いたけど。
その気遣いがとっても嬉しかった。
気にかけてくれてたのね。