「やあ、お待たせ」


風呂から出て、栞の部屋に戻った悠馬は、栞が出しておいた白いバスタオルを頭に掛け、上は白いTシャツを着、下はしっかりとGパンを履いていた。

普段の悠馬なら、湯上がりは汗が引くまでパンツ一丁でいるのだが、栞の手前、さすがにそれは出来なかった。


そんな悠馬の姿に、ホッとしながらも少しがっかりな栞であった。というのは、栞の父親の亮平も悠馬と同じで、湯上がりにはよく半裸でふらふらする事があり、まだ見た事のない悠馬のそんな姿を、ほんの少しだが見てみたいと思っていたのだ。


「じゃあ、私も入って来ていいですか?」

「もちろん、いいよ?」

「あの……」

「ん?」

「悠馬さんは、ここで待ってていただけますか? テレビとか無いから、退屈しちゃうかもしれませんけど……」

「ああ、いいよ。ここで待ってる」

「すみません。冷蔵庫に冷たい飲み物があるので、何でもお好きなものを……あ、ビールを持って来ますか?」

「いや、ビールはもういい。適当に何か貰うから、おまえは早く入って来いよ」

「はい。それじゃ……」


パタンとドアが閉まると、悠馬はなぜだろうかと考えた。つまり、なぜ栞はわざわざ自分にこの部屋で待つように言ったのか……

(他人の俺に家の中をうろつき回られたくないのかな)

そんな嫌な考えが出かかり、悠馬は考えるのをやめた。

栞にはある計画、と言うか決意があり、そのためだったのだが、それを悠馬は知る由もなかった。