「栞……」

「そうなんでしょ?」

「……すまない」


私は、何かの間違いであってほしかった。心の奥では、悠馬さんが否定してくれる事を祈っていたと思う。

でも、悠馬さんのその一言で、一縷の望みも消え去ってしまった。


「栞、帰ろう? 君はこんな所にいちゃいけない」

「…………」

「栞?」

「嫌です。もうあなたなんか、信じられません。あなたと行くより、この人達といる方がまだ安全な気がします」

「栞、なにバカな事を……」


「お嬢さんはバカじゃねえよ。お嬢さんはな、俺達と取り引きしたのさ」

「取り引き?」

「そうさ。お嬢さんを無事に帰す代わりに俺達は金をもらう。かなりまとまった金をな」

「ああ、そういう事だったのか……。そうやって君は時間稼ぎをしたんだね。よくやったね、栞。よく頑張った」


悠馬さんは、今まで見た事もないほど優しい笑顔でそう言った。心から安堵し、私を褒めてくれてるように見える。でも……

これもお芝居なのだろうか……