「そこで杏里さんは待ってたわけよ。あの野郎が目的を果たし、自分のところに戻って来るのをな。ところがあの野郎は怖気づいたのかなんなのか、ちっとも事が進まねえ。で、杏里さんに助けを頼み、杏里さんは俺に頼んで来た、ってわけよ。俺は杏里さんに弱みがあるから断れねえ。“惚れた弱み”って奴だけどよ」


そんな話、信じたくない。でも……

全て辻褄が合う気がする。パパの不可解だった行動も、悠馬さんから私の身を守ろうとしたと考えると、納得出来てしまう。


じゃあ、今日のデートで悠馬さんが言った“好き”という言葉も、お芝居だったの?

私が“大好きです”と言った時、悠馬さんは心の中ではほくそ笑んでたの?
“バカな女”だと思って?


「悪いな? 泣かせちまって。でもよ、本当の事が分かってよかったと思うぜ? 酷い目に遭う前によ」


私の目からは涙がとめどなく溢れたが、それを拭う気力すらなかった。