「杏里さんはそいつに頼まれたのさ。あんたをめちゃくちゃにしてくれ、ってな」

「そんなの嘘です。変な事言わないでくさい」


サブって人は何を言い出すのかと思ったら、あまりな作り話で笑ってしまいそうになった。悠馬さんが杏里さんに、私をめちゃくちゃに……?

そんなの、有り得ない。


「嘘じゃねえよ。俺が嘘言ったって、何の得もねえだろ?」


それはまあ、そうかもだけど……


「杏里さんから聞いた話だけどよ、あの松本って奴はあんたのじいさんに恨みがあるらしいぜ?」

「お祖父様に?」


私は、悠馬さんが家に来てくれた日の事を思い出した。あの日の悠馬さんのお祖父様を見る目や、悠馬さんとお祖父様やパパとの間に漂った、重たい空気を……


「ああ。どんな恨みかは杏里さんも知らないらしいけどな。で、あんたらは合コンで知り合ったんだってな? 松本って奴は、その時思い付いたんだとよ。じいさんに復讐するために、孫を痛め付けてやろう、ってな」


そ、そんな……

そう言えばあの合コンの時、悠馬さんはそれまで私に無関心だったのに、私が自己紹介をしたら急にジッと見つめてきてた。あれは、私がお祖父様の孫だと知ったから?