「お金を差し上げます!」


別に深く考えたわけではなかった。映画やドラマで、窮地に立った人が『金を出すから助けてくれ』みたいな事を言って命乞いをするシーンがあったのを思い出し、それを真似て言ってみただけだった。

でも、それでその人達が本当に助かったかは憶えてないし、実際、お金なんかじゃどうにもならないと思う。我ながら、つまらない事を言ってしまったものだわ。と思ったのだけど……


「何だと?」


男の動きがピタっと止まった。


「もし私を助けてくれたら、あなた方にお金を差し上げます」

「サブ兄、こう言ってますが、どうしましょう?」

「金か……。考える余地はあるな?」

「そうっすよね?」


男の手が私のコートから離れ、サブという人も私の肩から手を離し、私の横に座り込んだ。ちょっと近付きすぎだけど。


お金なんて効果ないと思ったけど、そうでもなかったみたい。とても意外なのだけど……