「えっ?」
その時、桐生さんがコートを脱いで私の肩からかけてくれた。
桐生さんの顔を見ると
「これも演出。気障だと思ったけどちょうどよかった。楓ちゃん寒いでしょ」
「あ、ありがとうございます」
胸の前でコートを合わせ…
桐生さんの香りがする。
今日一日側にいて感じた香りが…
何だか桐生さんに包まれてるような安心感が…
「楓ちゃん」
「楓ちゃん」
へっ?
あっ!
「す、すみません。…あっ!」
咄嗟に『すみません』って言っちゃったよ。
あ~しっぺだぁ~
「ククク…そんなに顔ひきつらせないで。今しないから」
「はぁ?」
そっか。今は撮影中だもんね。
で、でも
「『今は』って…後からするんですか?」
「ん?さあね」
『さあね』って
「桐生さ~ん」
「フッ 甘えても駄目」
「……」
甘えてないもん。
それに何だか桐生さん凄く嬉しそうじゃない?
優しい人に見えてるけどもしかしたら…Sかも。
わぁ~気を付けよう。