「可愛すぎる」
「は、はぁ?」
この疎い馬鹿丸出しの私のどこが可愛いのよ。
「俺は25。楓ちゃんが1年の時は4年」
あの時に4年生ならそんなに大学には来ないわね。
「ある時」
「えっ?」
桐生さんが話し始めた。
「山科先輩と久しぶりに飯食って…ちょうどプロとして本気でやっていくかどうするか悩んでいて…って就活すらしてないし音楽でやっていくとは決めてたんだけど、さてそれが現実になるとちょっと不安って言うか…そんな時に先輩に『飯どうだ』って誘ってもらって。どうも吉武先輩が先輩に頼んだみたいなんだけど。俺が先輩を慕ってんのをよく知ってたから。吉武先輩は俺達をデビューさせる為に就職先は今の事務所に入ったくらい俺達に賭けてくれてたから」
吉武さんらしい、そんなところ。
「飯を食って飲みに行って、その流れで先輩の家へ行った」
「う、家へですか?」
「あぁ。先輩の部屋で話をってなって…その時に酒とツマミを運んで来た楓ちゃんを見てビックリした」
「えっ?私ですか?」
家には吉武さんじゃないけど、しょっちゅう兄貴の友達が出入りをしていた。
私が1年なら、あの頃はまだ兄貴も家にいたな、そういえば。