一目惚れじゃないって…どういうこと?
「楓ちゃんは全く覚えてないだろうけど何回か会ってるんだ」
「えっ?」
桐生さんに会ってるって…こんだけイケメンさんなんだから会ってたら覚えているはず。
「嘘。いい加減なこと」
「嘘じゃない。入学間もない頃に楓ちゃん校内で迷子になっていて」
「迷子…」
確かに私は方向音痴だし大学に入った頃は、あまりの広さにうろうろしてしょっちゅう聞いていた。
「はにかみながら俺に道を聞いて『ありがとうございました』ってペコリと頭を下げ走り去って行く楓ちゃんを見て可愛いなと。だけどその時はそれだけで別に何とも…」
「……」
「それから何回か校内で迷子になって道を聞いてる楓ちゃんを見かけた」
「……」
恥ずかしいことにゴールデンウィーク明けくらいまで迷子になり続けていた。