う、うん?
何で私が桐生さんの恋人のことを思って溜め息つかなくちゃいけないの?
落ち込まなきゃいけないの?
――
―
あ、きっと撮影で一日『恋人』のふりをしてたからだよ。
うん。
私、感化されやすいし。
「クッ!ハハハ…」
えっ?
横を見ると…堪えきれなくなったように笑い崩れる桐生さんがいた。
な、何がそんなにおかしいのよ?
「ご、ごめん。ククク…ハハハ…」
謝りながらも笑うって。
「桐生さん!」
「ホントにごめん。だけど楓ちゃん」
「はい?」
何とか笑いを抑えて
「百面相上手いね」
「……」
へ、へっ?
ひ、百面相?
って…何?
「車から降りて夜景を見た瞬間の楓ちゃんは本当に嬉しそうに顔を輝かせて見入っていた。そのうち、何かを考え出したのか難しい顔になって眉間に皺を寄せてっし。その次は自分の中で折り合いがついたのかしきりに頷いてる」
「……」
じっと私を見てたの?
もしかして何を考えていたかまで…は分からないよね、さすがに。