「俺のブランケットがない!!」
そのパニック寸前な、自分と同じ顔の兄を見て、ナツミは訝しそうに眉間に皺を寄せた。
「なにいってるのよ、あるじゃないそこに」
寝床から起きたばかりの双子の兄、ナツキの膝元には、きちんと愛用しているブルーの毛布が掛かっている。
あれか、眼鏡を頭の上に押しやっておきながら「メガネメガネ」と探し回るタイプなのか。
ナツミは生誕10周年にして双子の意外な一面を。
「垣間見てねえ!
ブランケットってちげえよ、俺のあのテディベアのことだよ!」
「……ああ」
そういえば、ナツキはいつも彼の背中ほどの大きさのあるクマのぬいぐるみをおんぶして歩いている。
「ブランケットって名前なんだ…紛らわしい」
「なんだと!
だってアル兄がそう言ったんだよ!」
「アル兄が?」
「『そのクマ、まるでナツキのブランケットだね』って」
「……ああ」