けど、握られた手を振りほどくことはできなかった。


男の本能が理性を翻弄しようとしてる。


ミチルが唇を耳元に近づける。


「お礼に今夜はワタシを好きにさせてあげる」


吐息が誘惑した。


「バカ野郎!」


オレは低音で叫び、布団を蹴飛ばした。


「何考えてるんだ。お礼に好きにしていいだと? 不純すぎる。このあばずれ女! 下品! 
痴女! 淫乱!」


夢中で汚い言葉を浴びせた。


ミチルを罵倒したいというより、誘惑に負けそうな自分を非難しかたったんだと思う。