「波奈って言ったよね。」
「えっ??あっ…………うん。」
「あたしは嗄綺。」
「嗄綺…………嗄綺………。」
あたしは何度も『嗄綺』と名前を繰り返した。
嗄綺の名前はまるで魔法の言葉のように感じた。
「そんなに呼ばなくてもここに居るよ。」
「嗄綺………。」
「あたしと一緒に生きてみる??」
「えっ??」
「なんでかね??初めて逢ったばっかりなのに変かな??」
「うぅん!!!!あたしも嗄綺ちゃんと「嗄綺で良いよ??」」
「うん!!!!これからよろしくね!!!!嗄綺!!!!」
「ん。」
そう言って、あたしの前で初めて嗄綺は笑ってくれた。
でも………………その笑顔があたしが見てきた中で最後だった。
この後に起きるあたしの『事件』
その日を境に嗄綺は1度も…………笑わなくなってしまったんだ。