「でも私お弁当なんですけど」
「私、お弁当を買ってきますので、此処で待っていて下さい」

そういうと、佐々木は財布を持ち外へ買いに出かけた。
待っている時分でも、昼休憩を一緒にとるのは初めてのことで、落ち着かず、お茶を用意した方がいいのか、座るところを準備したほうがいいのかと、どうしたらいいのかわからず、うろうろとしてしまった。
佐々木が戻ってくると、今日子の隣のデスクを借り並んで食べ始めた。

「林さんとは、一緒の部署でもう3年になりますが初めてですよね。こうやって食べたり、おしゃべりしたりするの」
「そうですね」
「ずっとお話をしたかったんです。でもなんとなく話し掛けづらくて」
「……」

今日子の他人から交わりを持たないように生きてきたことが、佐々木に話しかけづらい雰囲気を作っていたのだろう。

「いつも思っていたんです。その綺麗な髪の手入れ方法とか、綺麗な肌を保つ秘訣なんか聞きたいなあ、なんて」
「そうだったんですか」
「いつも、美人なのに顔を前髪で隠していて勿体ないなあ。なんてことも思っていました」
「わ、私が美人? そんなことあるはずがないですよ」

思わず、手振りをして否定をする。

「え! 林さん美人ですよ? 色も白いし。カットして正解ですよ。とてもよく似合います。何か心境の変化でもあったんですか?」
「いえ、特には……もう30だから少し気を配ろうと思ってカットしただけです」

おしゃべりをしながらも、とっくにお弁当は食べ終えていた。
 間を持たせる為に、コーヒーを持ってくることを思いつく。

「コーヒー飲みますか?」

席を立ち給湯室に行こうとしたら、佐々木に止められた。

「林さん、先輩にそんなことされられません!私が入れますから待っていて下さい」
「じゃあ、お願いします」

そういうと、佐々木がコーヒーを入れにいった。

「先輩か……」