「凄くいいです。前から林さんは、掛けないほうがかわいいのにって思っていました。いえ、可愛いと言うより、かなりの美人です」
「え！？　私が？」
「はい。あっ、もう仕事の時間ですね。また後で」

かわいらしく手のひらを見せ、佐々木は自分のデスクに戻った。
残された今日子は佐々木が言った言葉が信じられなかった。
そのことが本当なのか、今日子の仕事は変化が見られた。

「あの、林さん、これ」

男性社員が回覧を持ってきた。
最後に回収するのは、今日子の役目だ。
今日子は、ビジネスマナーしかり、きちんとその場で立って受け取る。
その時、顔が近くて、お互いにびっくりしてしまった。

「ご、ごめんなさい」
「あ、いいえ」

謝る男性社員だが、今日子を見つめ、回覧から手を離さない。

「あの？」

離さない男性社員に、今日子は不思議顔で首を傾げた。


「あ、いや、その。回覧です」
「はい、確かに」

そんなことが、ずっと続いた。
休みの申請、書類のコピー。いつも庶務は担当と分担するのだが、この日は今日子に集中した。
昼休みになり、今日子は、佐々木に昼食を一緒に食べましょうと誘いを受けた。
入社以来初めて同僚と昼食をとる。
後藤とラウンジで約束があったが、こういうことなら許してもらえるだろうと、断りのメールを送る。
後藤は、喜んでそれを承諾した。