携帯の画面を見せられると、そこにはカット後の今日子と、担当の美容師が二人で写っていた。

「あ、それは今日髪を切って下さった担当の美容師さんです」
「やっぱり男だったんだな、担当。くそ、あれほど植草に言っておいたのに!お前の髪を触ったんだな? こいつが、そ、それに俺だってまだ一緒にいる写真がないのに、こ、こいつが、こいつが今日子とのツーショット写真の初めてじゃないかー!! ちくしょう、い、怒りが収まらねえ……」

 すごいやきもちだ。男は皆こうなのだろうか。植草もわざわざ送って怒りを誘うようなことをしなければ良いものを、今日子は対処に困り果てる。

「ぶ、部長。美容師さんです。髪を触るのは当たり前じゃないですか。い、今、一緒に撮りましょう。メイクを取る前に……今です」
「い、いやだ。こいつと一緒の日の後でなんか」
「でも、部長とは、綺麗にセットした髪とメイクがしてあるのでこの時と全然違いますよ、質が。ね?」
「……い、いやだ」

 もうどうしようもない。さあ、どうしたものか。

「部長……」

 なだめすかしてもダメ、困り果てた今日子は、

「…ん!?」

 後藤の首に腕を回し抱きついて自分からキスをした。唇を合わせるだけではない大人のキスを。
こんな大胆なことを出来る今日子ではなかった。
変身して、殻を破ったからかもしれない。きっかけはこんな些細なことだったのか。それも分からず何十年も時を無駄にしてしまったのかもしれない。
だが、この耐えた時間があったからこそ、こんな些細なことに大きな喜びを感じることが出来たのだ。今日子にしかわからない喜びだ。

「きょ、今日子?」
「機嫌、直りました?」
「ま、参った……」

 今日子は、全く意識していなかったが、後から後藤に小悪魔の微笑だった。と言われしめた。
 機嫌の直った後藤と話の続きをし、気が付いたら遅い時間になっていた。